Gallery 小さい芽





 ギャラリー小さい芽

 1996年9月16日 開館 
 設計と命名
 安藤忠雄氏
 1F
 打ち放しの壁面と木漏れ日の中庭
 2F・3F
 自然光溢れる吹き抜け空間
 安藤忠雄氏からの贈り物
 
 「白いオブジェ」
 小さい芽のロゴマーク
 スタンプ
 頂いた賞  第二回西宮市都市景観賞受賞(1997年)
   第五回くすのき建築文化賞受賞(2001年) 「いぶき賞」
   
   
                                            

 創           設


 たった20秒の大地震により、千歳町・寿町・安井町の静かな落ち着いた古い町のたたずまいは一変してしまった。
木造の古い家のほとんどはガレキの山と化し、崩れた土壁の乾いた強烈な匂いの中で、今後どうなるのかと考えるゆとりもなく、茫然とただ眺めるだけであった。
それでもアリが崩れた巣をなおすように、日一日と復旧され、2月にはいつものように白いモクレンが美しく花をつけ、ガレキの整理も進み、
あちこちに更地が目立ち始め、3月には我が家も小さな更地になった。

 さて後をどうするかと考えたとき、家の再建だけでは恐らく自分は満足できないだろうし、何か寂しいと思った。
そして、地震とともに崩れ落ちたように見えた夙川の文化に少しでも影響できるものを、また何か役立つものを建てようと真剣に考えた。

 私は1歳の時に歯科医師であった父を亡くし、その後母親が小学校の美術の専科教員として生計を立て、いつも学校の子供たちの話題と母親の描く絵を見ながら、絵に囲まれて育ってきた。そういうことから、私の頭に自然発生的にこの地に芸術文化の復興に寄与できるようなギャラリーを建てようと決心
した。
そしてそのギャラリーも単に展示スペースの提供だけでなく、人々の記憶から風化し、
やがて消えて行くであろ
う大震災を決して忘れないように”メモリアル・モニュメント”としての意味をもたせたい。
また、ギャラリーとして何かを発信し続けるエネルギー溢れるものがいい。


 そして建築にあたっては、芸術の良き理解者による設計であることが必要であった。
また、人の生活・生命を守るべき家が古いがために住人を押し潰した現実を目の当たりにし、また実際に私も倒壊
した我が家の柱に足を挟まれた母親を5時間かけて、水を飲ませ励ましながらやっとの思いで救出しながら、人間の
非力さを思い知らされた。人の安全を守るためには、強い強い家を作ろうと心に誓ったのである。

 エネルギー溢れ、芸術性があり、強い家が条件となれば20数年来尊敬していた「安藤忠雄氏にお願いしてみよう」という気持ちが浮かんだ。
そしてこれは妻も全く同じ考えで、二人同時に口から発していた。
安藤氏に我々の気持ちをぶつけることにした。そして、ご理解いただけたのか、4月3日にご自身が現場確認に来られた。
5月17日には研究所を訪れ、設計図と白い完成模型を見せてもらった。

安藤氏への感謝を胸に阪急北口駅より代替バスを乗り継ぎ帰宅した。

 そして年がかわった平成8年1月9日に地鎮祭を行ない、およそ8か月かけて完成した。
今、あの小さい敷地に堂々としたギャラリーが建っている。爽やかで感動的である。
地震でできた更地にまいた一粒の種が我々の願いに答えて芽を出してくれたのである。
震災復興の一つの形とし
て、また芸術・文化に役立つために出た芽が少しでも夙川の文化発展に役立てば、こんなに嬉しいことはない。

 安藤忠雄氏は大きく育つように願いを込めてギャラリーに”小さい芽”という名前を下さった。
大切に育てていきたいと思う。



   

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